学術変革領域研究(B)「折紙がつなぐ」

わたしたちは、その時々の必要に合わせて形や働きを柔らかく変える新しい人工物を実現することで、大量消費モデルからのパラダイムシフトをなせないかと考えています。この新しい人工物を実現する鍵として、DNAやタンパク質の折り畳み、昆虫の翅、脳の皴、植物の葉や花など、自然界に遍在し複合的な機能を生み出す「折り」の原理に着目しました。折りによって、1次元(線)から2次元(面)、2次元から3次元(立体)、3次元から4次元(動き)が作り出され、さまざまな機能が生まれています。

この「折り」の原理の中核をなすのが、日本伝統の芸術の「折紙」です。本領域「折紙がつなぐ」では、折紙を媒介として、自然に遍在する折りの科学(Science)、数理による原理の記述(Math)、芸術家の発想(Art)、製造と多機能性を担保する工学(Engineering)、情報と物質の統合(Technology)といったSTEAM領域を融合し人工物設計の学術体系を変革します。

Transformative Research Areas (B) "Universal Origami"

We propose a paradigm shift from the mass-consumption model by creating new artifacts that adapt their form and function to meet the needs at each moment. As the key to realizing such new artifacts, we study the principle of “folding,” which is ubiquitous in nature and produces complex functions, such as the folding of DNA and proteins, insect wings, brain wrinkles, and plant leaves and flowers. The traditional Japanese art of origami is at the core of this folding principle.

“Universal Origami“ will feature origami as a catalyst to integrate the STEAM fields of “Science” of origami ubiquitous in nature, “Math” that describes principles, “Art” that conceives the ideas, “Engineering” that guarantees manufacturing and multifunctionality, and “Technology” that integrates the information and materials. We will transform the academic framework of artifact design.

総括班:「科学と芸術と産業をつなぐ折紙 」
(舘、斉藤、石田、鳴海、金岡)

「科学と芸術と産業をつなぐ折紙」では、シンポジウム、協働WS、展示会などを通して、研究者・芸術家・実務家を広く巻き込んだ協働の場を提供します。芸術家と科学者による協働実践により多様な問いを生み出し、その問いから学際性の豊かな学術体系を構築します。こういった知見や発想の枠組みを産業と共有し、ものづくりに関わる社会革新の種を協創します。

「パターンと物性をつなぐ折紙数理」
(舘、今田)

「パターンと物性をつなぐ折紙数理」では、折紙の微視的な凹凸パターンと巨視的に持つ物性とをつなぐ数理理論を構築することで、数理・自然・人工物に遍在する折紙原理を明らかにし、特異な現象を生み出します。運動学・微分幾何学・力学系の数理を融合させ、折紙のふるまいを自己組織化や対称性の破れなどシステムの視点から記述可能とし、曲面間のモーフィング、剛性の局在化・相転移・孤立波などの特異な現象の創生にも挑みます。

「自然と人工物をつなぐ折紙科学」
(斉藤) 

「自然と人工物をつなぐ折紙設計原理」では、昆虫の翅を初めとする自然の折紙の数理・技術体系を解明することで、2次元と3次元を超越する新たな形態創生テクノロジーの創出を目指します。植物の葉・花の展開や昆虫の翅の折りたたみなど自然の折紙構造は進化の過程で洗練され最適化されています。これらの優れた「自然の折紙」を工学に応用する生物模倣工学だけでなく、自然がどのようにして優れた折紙を創成するのかという根本的な問いについて研究します。

「形と力学をつなぐマルチフィジックス折紙工学」
(石田、中) 

「形と力学をつなぐマルチフィジックス折紙工学」では、折紙と機械工学4力学を融合し、「折紙に新しい機能を創出し、工学的な付加価値を創造する」をテーマに研究を推進します。「折紙×材料力学」では、折紙の展開性と高剛性を兼ね備えた構造の設計、「折紙×機械力学」では、折紙の双安定な構造を用いた防振機構の設計、「折紙×流体力学」では、折紙表面の折り目の凹凸による流れへの影響を解明するなど、社会の技術的課題に対し折紙の特長を活かした新しいソリューションの提供を目指します。

「機能性と製造性をつなぐ自己折り技術」
(鳴海)  

折紙を自動で折る「自己折り」と呼ばれる技術が存在します。近年、我々は数千個以上の面を持つ複雑な2次元の折紙パターンをインクジェット印刷し、熱をかけることで与えられた3次元の曲面を短時間・省材料・省スペースで自己折りする手法を開発しました。このチームでは、自己折りにおいて (A) 変形後のミクロな構造を利用した機能性の実現と、(B) マクロなレベルでの製造性(耐久性・スケール)の向上を目指します。これにより、複合的な機能を持つ人工物を2次元の印刷だけで実現し、折紙工学における設計・製造の限界を克服します。